タイトルの安っぽさ(褒めてる)に「またテンプレですか」と構えたんですけど、蓋を開けたら二人の距離感の縮まり方がこんなに丁寧だったせいで、5回も読み返す羽目になってます😁。エロ配信者とオタクという取り合わせの時点で「これは来るな」と薄々感づいてたんですが、その予感が見事に当たった感じですね。就活より真剣に読んでます。
**二人の片思いが「すれ違ったまま」がこの作品の肝**
本作の最大の魅力は、市井と結城の関係の持ち方にあります。オタクに優しい陽キャである市井が実は配信者の結城に好意を持ってて、その結城も市井のことが気になってるのに、二人ともそれに気づかない(または気づかないふりをしてる)という状況ね。もう、ページをめくるたびに「お前ら、もう喋れよ」と突っ込みたくなる。
ここでキモになるのが、作家・ねこげの表情の描き分け。視線の交わし方、拗ねた顔、目の奥にある本音と建前—このへんが本当に丁寧で、キャラのセリフより表情で全部が伝わってくるんです。結城の筋肉にしても、単なる設定じゃなくて「配信という舞台の中で見せるための筋肉」として描かれてるから、後半のエロシーンまで全部が自然に繋がっていく。その説得力がね。
同じ作家の別作品と比べると、本作は比較的シンプルなストーリーながら、二人の微妙な心理の揺らぎに特化してるのが特徴。恋愛の駆け引きだけに徹した作りになってるから、テンポ的には「二人を見つめる」ことに専念できるんですよ。
**サンプルからは絶対見えない「配信画面での自己認識」という沼**
正直、サンプル段階ではこの作品の本質は掴めません。後半の両片思いが解けていく過程ですべてが一変するんです。特に重要なのが、結城が市井の気持ちに気づくんじゃなくて、配信という公開空間の中で「自分の気持ちを自分で初めて認識する」そのときの表情変化。限られた配信画面の中でそれが完全に見切られてしまうんですよ。
ここまで読んで初めて腑に落ちるんです。「あ、この二人の関係性は、配信を通じてしか成立しないんだ」って。パーソナルスペースが配信という不特定多数に向けた舞台と重なる—そのロジックが、この二人のラブストーリーの根幹になってる。サンプルじゃ絶対わからん沼です。3回目の読み返しで初めてそれに気づいて、4回目でその構造を何度も読み返して、…もう話になりません😂。
**「オタクに優しい」が単なるキャラ付けじゃない理由**
市井のオタク属性も重要。これがファッションではなく、結城への甘さを説明する本質的な理由になってるんです。「オタクに優しい陽キャ」という看板は、人当たりの良さじゃなくて「相手のパーソナルスペースを尊重する本質」を指してる。だからこそ結城の配信という最もプライベートな活動まで受け入れられるし、そこに甘さが出ても違和感がない。このロジックがちゃんと設計されてるのって、意外と多くの作品では手を抜いてる部分なんですよ。
**惜しい。ただし、その惜しさが「決定」でもある**
ただ、223ページというボリュームの制約の中で、詰め込まれすぎてるのは確か。結城のキャラとしては魅力的に描かれてるんですけど、「なぜ配信を始めたのか」という背景設定がやや薄め。市井とのやり取りの部分は完璧に近いのに、そこだけ「あ、そういえば詳しく知らないな」って感覚が最後まで拭えませんでした。もう30~50ページあったら、この部分でさらに厚みが出てたんじゃないかな。正直、そこは惜しい。
同ジャンルの配信者BLと比較すると、本作は「顔出し配信の危険性」や「ファンとの距離感」といった現実的なディスコミューニケーションを正面から扱わない分、フィクションとしての甘さが際立ってます。ただこれを弱点と見るか決定と見るかで評価が分かれるんですよ。「二人のラブストーリーに全振り」という潔さを買うなら、その選択は間違ってない。現実的なリスク管理より「二人の心情」を優先させた作りは、ある意味で贅沢です。
**結局、誰が買いで誰が見送りか**
同じボリュームなら同じ価格で他の作品も選べる状況ですが、本作は「二人の心理描写と配信という舞台設定の組み合わせ」という尖った部分で差別化できてます。配信者もの初心者、「両片思いの切なさ&嫉妬の嫌らしさ」が好物な人、あるいは「視線や表情の変化で全部を物語る」作家の手技が好きな人なら、この一冊は本当に刺さる。セール時なら迷わず即決でいいレベルです。
逆に「背景設定の厚み」や「社会的なリアリティ」を求める人、あるいは「ストーリー性の濃さ」を最優先する人なら、別の選択肢もあるかもしれません。本作はラブストーリーとしては完成度高いですけど、配信者というキャラクターの掘り下げを求める人には物足りないでしょう。
【条件付き買い】—エロ配信者という設定そのものより「市井と結城の二人が配信を通じて繋がるロジック」に魅力を感じられるなら、文句なしにおすすめできます。その部分に共感できれば、何度も読み返す価値がある作品です。
作家: ねこげ
ジャンル:
単行本 筋肉 恋愛




