【成人向特典付き】秘密ありきの僕たちですが

BL単行本
【成人向特典付き】秘密ありきの僕たちですが 特別版
総合 ★3.8 / 5.0|秘密の重さと甘さの調和度 |表情に頼る演出力

秘密を抱える二人の関係性がじっくり変わっていく様子を、心理描写と小さなディテールで丁寧に見せた作品です。テンプレ展開かもしれませんが、その「テンプレ」を二人の視線の交わし方と表情でしっかり消す。沼底へ引きずり込まれる感じですね。

まず「秘密ありき」というタイトルの構造の良さについて。よくある「実は○○だった」みたいな後付け感のある秘密展開ではなくて、序盤から秘密の存在が静かに仄めかされているんです。その秘密が重すぎず軽すぎず、ちょうどいい塩梅。読み進めるにつれて「なぜこの二人はこんな関係なのか」という問いが少しずつ解きほぐされていくんですよ。その過程で攻めと受けの心理が交錯しているのが見どころです。特に中盤以降、受けが攻めの秘密に気づいていく瞬間の表情描写。あの目の角度とコマ割りだけで、作家・櫻井ナナコの力量がわかります。

もう一つ、この作品は「沈黙」の使い方が本当に上手い。セリフがないコマでも二人の関係が動いていくんです。ニートの人生は沈黙で埋まってるんですけど😁、BLの中の沈黙はちょっと違う。その空白にしっかり感情が詰まってるんですよ。読み手がコマとコマの間で「ああ、この瞬間に二人の何かが変わった」って感じ取れる。そういう引き算の美学を上手に扱ってる印象。最近の「全部セリフで説明」系BLが多いから、より印象的に感じるのかもしれない。

同じく「秘密」をテーマにした他のBL作品と比べると、この作品はかなり静かめな描き方です。激情型の攻めが秘密を暴露して大騒ぎになるタイプではなく、受けの忍耐と優しさの中で二人が少しずつ距離を埋めていく。その方が派手さは落ちるんですけど……落ちるんですけど、後味が全然違う。何度も読み返したくなる、じんわりした満足感がある。

一番刺さったのが、後半に攻めが心を開いていく過程を描く部分ですね。これはサンプルには絶対入ってない。序盤のサンプルだと「秘密がある二人」という段階で終わるんですが、フルで読むと、攻めの心の動きが詳細に描き込まれているんです。顔の角度、指の動き、視線の落とし方……そういった小さなディテールの積み重ねで「ああ、この人、本当に心を開こうとしてるんだ」って伝わってくる。正直なところ、あのシーンだけで5回読み返してます。声で言うなよって話ですけど😂、言ってる。そこに詰まってるエロシーンも、単に脱がせてるだけじゃなくて感情をガッツリ乗せてるタイプ。ニートとしてお金を使う価値があるのは、こういう部分なんですよ。

櫻井ナナコという作家の特徴として「設定の奇抜さで引っ張るタイプではなく、関係性の変化を丁寧に追う」というスタンスがあるんですが、この作品もそのポリシーを貫いてます。だから心理描写の層が厚い。ただし、それは裏を返せば「派手さを求めてる人には物足りない」ってことでもあるんですよね。ドラマティックな展開やどんでん返しを期待していると、中盤のペースで退屈に感じるかもしれない。ボリュームも236ページという平均的なページ数なので、「もっと読みたい」という飢餓感が出る可能性はあります。その辺りは正直に言っておきます。

でも「秘密系だけど圧倒的に重くない」「攻めの心の変化を静かに追いたい」「表情の細かさで作品を判断する派」という人なら、これは絶対に買う価値があります。特に「二人の関係性が動く瞬間」を愛する層には110%推奨します。セール期間中なら迷いようのないレベル。通常価格でも「このテンポ感とボリュームなら納得」という感じですね。

判定は【条件付き】です。激情系が好き、ドラマティックな展開を期待してる、エロ濃度重視という方は『他の櫻井作品』か『別の作家の秘密テーマBL』を検討してもらった方がいい。でも「二人の心理の行き来を見るのが好き」「沈黙の中に詰まった感情に反応する体質」「目の交わし方で全部判断できる」という方なら、これは沼です。買いです。もう言葉はないんですけど、とにかく視線と指先に全ての感情が詰まってる系の作品だと思ってください。読み返すたびに新しい表情が見えてくる。ニートのクレジットカード申し込みができない状況でもこれは課金する価値がある。そのくらい、推します。

作家: 櫻井ナナコ

ジャンル:
単行本

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