291ページもあるのに、心に残ってないんですよね。短編集ってそれぞれの作品が短いぶん「この一編だけはヤバい」という沼体験が無いと、ボリュームだけかさばって終わってしまう。今巻はまさにそのパターンです。複数作家による競合状態なので、相対的に「これは?」という作品が目立つしかない。悪く言えば、内容のばらつきが激しすぎて、全体の熟度が落ちてる印象を受けました😁
Adamシリーズの強みは「いろんな作風をワンストップで味わえる」ことだと思うんですけど、volume.16ともなると、その強みが弱点に反転してるんですよ。推し作家さんの短編は相変わらず丁寧で、コマ割りも表情の描き分けも完璧。でも同じ一冊に収録されてる他作品と比べると、その差が浮き彫りになってしまう。「この人とこの人、同じシリーズとは思えん」ってくらい。短編集って、実は編集の選別眼がすごく試される企画なんです。クオリティの波が大きいと、「読了した」という事実だけが残って、「面白かった」という感覚が残らない。ニートの貴重な昼間時間使ってるわけで、そこは譲れないポイントなんですよね。
気になるのは、テンプレ展開に頼りすぎてる作品が複数あることです。「年下が器用に好意を伝える」「先輩が鈍感で最後に気づく」みたいな王道展開は、本来ならキャラクター造形の丁寧さと心理描写の説得力でいくらでも化けます。でも今巻は、その「化け」の部分が足りてない。テンプレのまま終わってる作品がいくつもあるんですよ。逆に、会話の「間」を大事にしてる、登場人物の細かい表情変化を追いかけてる作家さんの短編は、短い尺の中でも関係性がちゃんと立ち上がってる。その差が同一冊内にあるから、物足りなさが増幅されてしまうんです。
エロシーンについても同じことが言えます。技術的には及第点なんですけど、感情を乗せる気がしないというか。攻めの快感よりも、受けの揺らぎ方、その過程での表情変化にもっと紙を使ってほしかった。心が揺らいでいく、抵抗から受け入れへ移行していく、その「目の描き方」一つで短編のクオリティは全然違うのに。そこが簡潔に済まされてる作品が目立つ。短編だからこそ、登場人物の心の動きは「わずかな表情変化」で伝えるべきなんです。それが出来てる作家と出来てない作家の差が、今巻は大きすぎる。
既出作家さんの過去作と比較するなら、正直に申し上げて今巻は下がってます。FANZAランキングの常連さんの新作も含まれてるはずなのに、「期待値が高かっただけに……」という残念感が先に来てしまう。もしくは編集側の都合で、全力投球できない時期だったのか。いずれにしても「Vol.15までの安定感」という信頼が逆に働いて、今巻の微妙さが際立ってるんですよね。
ただし、完全にダメな一冊かと言えば、そうではありません。推し作家さんの作品は今巻でも秀逸で、その一編だけなら何度でも読み返したい。正直、その作品のためだけに購入する価値はあります。だから「全部ダメ」という評価ではなく、あくまで「当たりハズレが同居してる短編集」という評価になるわけです。これは短編アンソロジーの宿命というか、メリットでありデメリットでもある。
他の短編集との比較で言えば、『Adam』シリーズ自体はクオリティが安定してる企画です。ただ今巻に限っては、『ミリオンペアズ』や『快感フレーズ』みたいな同ジャンルの短編集と比べても、「あ、今回は外れ巻か」という印象。セール時期の『Adam』なら「複数巻まとめ買いで質担保できる」という信頼があったんですが、今巻は「単巻での質を問われる」段階に来てるんでしょう。
判定としては【条件付き】です。推し作家が掲載されてるなら購入価値あり。その作品だけで元は取れます。ただ、「安定したBLを読みたい」「クオリティで作品選びしてる」という人には、正直、Vol.15やVol.14を改めて読む方をおすすめします。もしくはセール時期まで待つか、別シリーズで補填する方が賢明かな。291ページ全部が必要かと言われると、ちょっと微妙。推し作家の一編のために約2,000円使うのは、ニート的には「推しへの課金」と割り切る気持ちが必要な額です😂
作家: ぼんち, きすけ太郎, mizk, 春山モト, 相音きう, みづい甘, Mりあ, 桜田キョーコ, セヤカテ
ジャンル:
単行本 ゲイ









