アルファの調印式

BL単行本
アルファの調印式【R18版】【コミックス版】
総合 ★2.8 / 5.0|アルファのプライド葛藤度 |調印式というワードへの期待値との乖離度

正直に申し上げると、この作品は「タイトルで期待を裏切られるBL」の典型例だと思いました。「調印式」って字面だけで勝手に「運命的契約」みたいな何か重要な儀式が来るもんだと思ってたんですけど、蓋を開けたら「セックスが儀式的」程度の解釈に留まってたんですよ。別にそれが悪いわけじゃないんです。悪くはないんですけど、タイトルの重みと内容のバランスが完全にズレてるのが、この作品の一番大きな問題点だと感じました。

肝心の関係性の部分がここまで薄いとは思いませんでした。攻めが「俺がお前を守る」「俺のオメガだ」と繰り返すシーンは複数あるんですけど、そこに至るまでの心理プロセスが完全に飛ばされてるんですよ。なぜこの攻めはこの受けに執着するのか、受けはどうしてこのアルファに身を委ねるのか。その「なぜ」の部分がないと、エロシーンも所詮は「脱ぐだけ」になっちゃう。池玲文さんの表情描写って本当に丁寧な人なのに、そこが活きる場面が限定的だったのが何より惜しかった。才能の使い方を間違えてるみたいなイメージです。

ここから先は他作品との比較になっちゃいますけど、同作家の過去作と比べると設定の凝り方は確実に今作が優ってるんです。でもカップリング自体の「推し度」という点では、前作の方が圧倒的に感情移入しやすかった。あちらは二人の関係が「ふとしたやり取りの積み重ね」で作られてたんですよ。小さな出来事の連鎖で関係が変わっていく、その丁寧さが今作には欠けてる。同じボリュームでも、配分の問題で全然違う作品になっちゃうんだなと痛感しました。

エロシーンに関しては、正直なとこ「ここだけは評価できる」という感じです。単なるエロいだけじゃなくて、二人の感情が乗ったセックスとして描かれてる。表情、息づかい、指の動きの細かさを見ると「あ、この人本当に上手いんだ」って思わされるんですよ。でもそれが逆に悲しいんですよね。こんなに丁寧に描けるのに、なぜ前段階の関係構築にその丁寧さを向けなかったのか。「このシーン、だからどうした?」という冷めた気分になるのは、二人の繋がりが説得力不足だからなんです。

オメガバースって今、マジで競争激しいジャンルなんですよ。同ジャンルの話題作を何冊も読んでれば分かるんですけど、「設定が凝ってる」「絵が綺麗」という要素だけでは差別化できないんです。むしろ重要なのは「この作家がオメガバースの『運命の相手』『番』というシステムを、どう独自解釈するか」という部分。そこが作品の個性を決めるんですよ。この作品の場合、そこが従来通り過ぎた。「調印式」というお膳立てで期待させておいて、実質的には「番になるための儀式=セックス」くらいの踏襲に留まってる。もったいないんです、本当に。

ページ数の割に話の密度が薄く感じるのは、おそらく「絵のボリューム」と「物語の進み方」のバランスがこのページ数に合ってないからだと思う。もっとシンプルなストーリー展開なら、この美麗な絵柄でも問題ないんですよ。でも「調印式」みたいに大きなタイトルをつけるなら、世界観や設定を掘り下げるための紙幅が必要だった。それが足りてない。ニートなんで日々の時間は腐るほどあるんですけど、財布は腐るほど潤ってないんですよ😁 だから「このページ数でこの値段」という投資判断は真剣に考えるわけです。

もし「オメガバースなら何でもいい、とにかく綺麗な絵でエロシーン見たい」という層なら、この作品で十分です。エロのクオリティは本当に高いし、圧倒的に美麗な作画で気持ちいいシーンを堪能できます。でも「二人の関係性に浸りたい」「物語の世界観に没入したい」というタイプのBLファンなら、ちょっと物足りないと思う。同じ予算で、同ジャンルにはもっと関係性が深い作品が複数ある。そっちを先に試す方が、失敗のリスク が低いです。

【条件付き】

池玲文さんの既存ファンで「この作家の新作は絶対買う」という層なら問題ない。ただ「いいオメガバース作品ないかな」と探してる人や、この作家を初めて試そうとしてる人は、他作品を優先推奨します。絵の質感と話の内容のコスパを考えると「このお金を別の作品に回した方がよくない?」って選択肢が複数思いつくんですよ。素材は本当に悪くない。設定も悪くない。でも「調印式」というタイトルの約束に内容が追いついてないのが全部。正直なとこ、それが評価を落とした全てです😂

作家: 池玲文

ジャンル:
単行本

タイトルとURLをコピーしました