異種間アンソロにしては珍しく、当たりの回は本当に沼ります。ただし、外れとの温度差がエグい。
複数作家による異種族BLアンソロということで、期待値としては「色んな種族ペアリングが一気に見られる」くらいのもんだったんですけど、蓋を開けてみると当たりハズレが結構はっきり分かれてるやつですね。6人の作家が手がけてるから、画風も話のボリューム感も全然違うんですよ。ぽけろう先生の回は世界観の作り込みが細かくて、ページ数少ないのに没入感が半端ない。一方で、別の作家さんの話は正直「設定資料集のページをめくらされてる」感覚で、キャラの感情より種族設定の説明が前に出てる。短編集あるあるなんですけど、ここまで濃淡あると、読んでて「次はどういうテンションなんだ」ってちょっと疲れますね。ただ、好みの作家さんの話に当たると、その数ページがめちゃくちゃ重い。攻めと受けの力関係の逆転、種族の違いによる身体的・心理的な葛藤——そういう要素が恋愛の芯にちゃんと据わってる話は、もう本当に何度も読み返す。
異種族BL短編集という枠組みなら、このボリュームでこのクオリティは及第点以上です。丸田ザール先生の回が特に秀逸で、獣型と人間型の身体的な違いをそのまま官能描写に活かしてて、「ああ、設定を遊んでるんだな」っていう余裕が感じられる。九朗先生のはシリアス寄りで、呪いや不治の病みたいな重いテーマを詰め込んでるんですけど、やっぱり短編だと説明不足感は否めない。蜂巣先生は攻めの表情の描き分けが丁寧で、無表情なキャラが弱さを見せる一瞬の柔らかさを、ちゃんと目や口元で表現してる。森世先生は王道寄りで悪くはないんですけど「短編に詰める話か?」感はある。つまり長編で読みたかったということです(本人は納得してない気がする)。
重要なのは、サンプルだけ読むと「複数種族が出てくるアンソロなんだ」で終わっちゃうってことなんです。全話読むと、各作家がどこに注力してるかが透ける。エロシーンに全力の人、キャラの心理に全力の人、世界観構築に全力の人。短編という制限の中で、何を諦めて何を選んだか。その作家の「推し要素」がはっきり見えるんですよ。それが短編集の面白さであり、同時に沼へのエントランスになってる。特にぽけろう先生の話は続きが気になるレベルで、アンソロに収録された話としては珍しく「この話だけ長編化してくれ」という欲求が発生します(3回読み返した時点で気づきました😂)。
ここからが買うかどうかの話なんですけど、異種族BL沼に身を置いてる人には迷わず買いです。種族の違いを単なる設定じゃなく、ちゃんと恋愛の葛藤に組み込んでる話ばっかりなので、「異形キャラが好き」「力関係の逆転に弱い」「設定を活かしたストーリーが読みたい」って人には刺さる確度が高い。ただし短編集って個人差があるじゃないですか。全部がアタリとは言い難いので、「6話で3~4話が推しになれば満足」くらいの気持ちで入るのが吉です。単価的には、このボリュームなら妥当。むしろ気になってた作家6人の絵柄や世界観を一気に確認する教科書代として考えると、悪くない投資。ニート的には「好きな1話との再会だけで元は取れた気になれる」という都合のいい脳みそのおかげで、割と気楽に読める😁。ただしアンソロの宿命として「ハズレ話を読む時間」が必ず発生するのは、覚悟しておいた方がいい。その代わり、深夜2時に「あの話もう一回読みたい」ってなる当たり話が確実に1~2話入ってるのが救いです🙏。
【条件付き】―異種族BLが好きで、複数作家の作風を試したい人には買い。でも王道BLオンリー派で、設定より心理描写や感情重視な人は、もう一段評判を確認してからでいい。
作家: ぽけろう, すなこ, 丸田ザール, 九朗, 蜂巣, 森世
ジャンル:
単行本







