国宝級イケメン俳優の俺がAVに出るなんて【極】

BL単行本
国宝級イケメン俳優の俺がAVに出るなんて 特典小冊子【極】
総合 ★3.7 / 5.0|掛け合いの間のよさ度 |攻めのデレ具合度

タイトルを見た瞬間「また『イケメン俳優×秘密』系ですか。何回同じプロット見ればいいんですか」と思ったんですけど、これは裏切られました。いい意味で。というか、むしろテンプレ感を逆手に取ってる形になってるんですよね。

設定だけ聞けば、国宝級イケメン俳優・賢人と彼の専属マネージャーの話。タイトルの「AVに出る」という触れ込みは、率直に言えば只のギミック。実はそんなに重要じゃない。むしろこれはそのギミックを使って、二人がどこまで近いのかをギリギリのラインで見せる心理戦なんです。賢人が冗談めいて「AVに出るぞ」とぶっこむ → マネージャーがそれに反応する → その反応の仕方が「プロの対応」でも「同僚の対応」でもなく、もっと内側からの反応に見える。そこですよ。このセリフの端々から伝わってくるのは、既に深い信頼関係があるのに、二人とも「それを言及しないで進めてる」という、その気持ち悪くて好きな距離感。短編43ページという制約の中で、浅井西は表情の描き分けとテンポだけでそれを成立させちゃってるんです。

実際、マネージャーが賢人に対して「そっちが言うな」とツッコむシーンがあるんですけど、その直後のコマ割りで二人の間に走る空気が完全に変わるんですよ。サンプルじゃカットされてる後半のやり取りこそが、この二人が社会的にはどこまでなのか、でも心情的にはどこまで行ってるのかを確定させるポイント。特に、賢人がマネージャーを見つめるときの目線の角度だけで「これはただの仕事パートナーではない」が一発で分かる。短編ならではの「ワンカットの圧力」でもって関係性を伝える手法として、これほど完璧に機能してるのは珍しいです。その一瞬を決め手に出来るってことは、キャラクターの心理設定がしっかり骨組みされてるってことなんですよ。

短編小冊子というジャンルの中では、これは正直なところ上位です。「イケメン俳優×マネージャー」なんて腐女子なら見飽きた設定にもかかわらず、この二人に関しては「新しく始まる関係」に見せないで「昔からこういうやり取りしてた」という確かさを出してるのが上手い。そういう逆張りって、実は難しいんですよ。下手すると「初めましての二人にしか見えない」か「あからさまに付き合ってる」のどちらかになっちゃう。でもこれは「一段階手前で止まってる」という、その揺らぎが秀逸。掛け合いのテンポは特に目立つところで、セリフの応酬だけで二人の歴史と呼吸が伝わってくる感じ。ニートが深夜3時に一人でニヤニヤするレベルの会話運びです(実際にしました)😂

ただし、短編という制約がここまでの評価を貫く上での天井にもなってるんです。43ページってどうしても「ハイライト集」になるしかない。二人の背景、どうしてこんな関係なのか、なぜ今なのか、みたいな「掘り下げ」の領域には足を踏み入れない。つまり、心理描写の深さで大好きになるというより、短い時間で「この関係、好きだな」と思わせられるかどうか、その勝負なんです。長編作品で時間かけて二人の葛藤や過去を丁寧に見せるのが好みな人からすると「物足りなさ」が残るかもしれません。価格相応の読み応えはありますけど、「新しく買うか、既存の長編優先するか」で迷ったときは、後者を選んでも損しないレベル。ニート的には「セール時に『まあいっか』で買い、通常価格なら『別の作品あるし』で様子見」ですかね😁

それとエロ濃度についても触れておくと、小冊子の分量を考えるとそこまで重厚ではありません。関係性と心理戦がメインで、エロシーンは「確かにそのシーンがある」くらいの扱い。これが長編だったら、もっとじっくり心身の距離を詰める過程が描かれるはずなんですけど、43ページではそこまで尺がない。エロを読む比重が高い人は、その点で少し物足りなさを感じるかもしれません。

同じジャンルの他短編小冊子と比べると、これは確実に上。でも浅井西の他の長編作品を既に読んでる人なら「あ、この人の短編版だな」という立ち位置で読むことになる。それでいいか、それとも新作長編を待つか、そこの選択なんです。掛け合いのテンポや表情描写に惹かれる人、「一瞬で関係性を悟る」という高度な恋愛を好む人、マネージャー×クライアント構図に弱い人なら、買って後悔はありません。再読にも耐える質感がある。ただ「短編より長編で心理描写をたっぷり読みたい」派や「設定より深掘りを重視する」人なら、他を探したほうが無難です。

【条件付き】。短編の良さを理解してる人、浅井西の手腕を既に信頼してる人、セール時に買う人は推奨。でも「初めての浅井西」なら長編から入るほうが沼度が高いです。

作家: 浅井西

ジャンル:
単行本 恋愛 ラブコメ

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